会長挨拶

癌免疫外科研究会会長 岡 正朗
会長:岡 正朗

 癌免疫外科研究会は,外科系医師を中心に基礎的研究に基づいた臨床の現場における免疫療法を探求する目的で,1980年(昭和55年)井口 潔教授(九州大学第二外科)を会長として,折田 薫三教授(岡山大学)が岡山で第1回研究会を開催されて以来34年が経過し,癌免疫療法も新たな展開を見ております。

 本邦での免疫療法の推移を見ますと,1970年代は非特異的免疫療法としてOK-432,PSK,LentinanなどのBiological Response Modifiers(BRM)が中心であり,多くの臨床研究や治験が行われました。特筆すべきはこれらが全て日の丸印の製剤であり,術後補助療法として有効性が検証されました。1980年代にはIL-2を代表とする各種サイトカイン療法や活性化リンパ球細胞療法(LAK細胞,CTL細胞など)が行われましたが,期待されたほどの効果は得られませんでした。1991年T. Boonが腫瘍特異的抗原を明らかにして以来,癌抗原に関する研究が大きく発展し,樹状細胞や腫瘍抗原ペプチドが開発され,癌ワクチンの臨床治験が行われています。さらに,2000年以降には免疫を抑制する制御性T細胞,骨髄由来免疫抑制細胞,樹状細胞からT細胞への負の共刺激因子の存在が明らかにされ,免疫逃避機構の制御が癌治療へのカギを握るとまで言われています。特にCTLA-4やPD1の抗体療法はImmune Checkpoint Therapyとして世界的に注目を浴びています。その他,分子標的治療薬もその効果に免疫反応が大きく関与していることも明らかにされつつあります。遺伝子療法に関してもTCRの改変により強力なCTLを誘導し,投与する臨床治験も行われ,細胞療法も新たな展開を迎えており,放射線療法や化学療法に耐性の癌幹細胞の制御には免疫療法が期待されています。

 以上のように,癌免疫の基礎研究から癌治療に貢献する新たな戦略がもたらされ,手術療法,化学療法,放射線療法に続く,第四の治療として免疫療法が位置付けられる日も遠くはないと思われます。

 本研究会では,癌治療に日々取り組んでいる外科医だからこそ発想する癌免疫の研究や治療を発表し,癌患者に貢献する先駆けとなることが求められています。多くの会員が,特に若手外科医が癌免疫のトランスレーショナルリサーチや臨床治験に関わり,その成果を本研究会で発表し,大いに議論を戦わせることを期待しております。

癌免疫外科研究会 会長 岡 正朗